小百合の場合(小説)その30
最初から読む→第一章「小百合の場合その1」
途中から読む→第二章「小百合の場合その11」
途中から読む→第三章「小百合の場合その22」
私がここに来て二カ月くらい過ぎたかな。
男子君も住み始め、一月ほどの時間が過ぎた。
3人で楽しい生活だったと思う。
そしてある朝、一緒に出勤するミュウちゃんから相談される。
ミュウ
「小百合さん、実は・・来ないんです」
「生理が・・」
さすがにね・・
男子君が住むようになって、毎晩の様に二人で楽しんでるみたい。
私はどんどん参加しなくなって、最近分からなかったけど。
二人とも大人だから避妊とか任せて、特に干渉はしなかった。
月並みな返しだけど聞き返す。
私
「うん、それでミュウちゃんはどうしたい?」
ミュウ
「私は・・」
やっぱり女子としては悩むよね。
でも大切な事。
本音を教えて。
貴女がどうしたいかで今後が決まるの。
私も協力する。
最初に貴女が決めるの。
ミュウ
「私は・・できれば産みたいんです」
「彼の子供が欲しいんです」
「でも彼は何て答えてくれるか・・」
「そして両親にどう言われるのか・・」
そうだね。
心配だね。
男子君は会社辞めたばかりで仕事は派遣だし。
ご両親が反対する事も考えなくちゃね。
男子君の事は私も説得できるというか、協力出来ると言うか。
でもご両親の事はねぇ・・
どうしたら良いの・・
私もしばしの時間沈黙してしまう。
彼女が意を決したように言う。
ミュウ
「やっぱ辞めます」
「産むの辞めます」
その発言に、更に答えを出せない私。
二人の事はよく知ってるから。
だから余計に考えてしまう。
どう答えを導いてあげたら良いのだろう。
私
「とりあえず検査薬使ってみよ」
「それで出来てたら病院」
「後の事はその時考えよ」
そう言ってその場をなだめ。
二人で会社の入り口をくぐった。
女は来るもの来ないと不安になるよね。
その点、男は気楽だと思う。
来ない怖さとか無いもんね。
職場に入り自分の席に座ると同時にお呼びが掛った。
上司から応接室に来るようにと。
なんだろう・・
私、何か悪い事したかなぁ?
問題起こした?
少しばかり疑心暗鬼になって応接室のドアを開ける。
あっ!
来たよ・・
応接室のソファーに旦那と見知らぬ人が座ってる。
来たよ・・来ちゃったよ・・
とうとう決着をつけなきゃいけない時が。
上司から事の次第を説明受ける。
なんでも一緒にいる人が弁護士。
旦那の依頼を受けて同席してるそうな。
会社としては個人のプライベート干渉はしない。
今日は有休扱いにするから、ゆっくりお話ししてくれ。
そんな感じだった。
上司に聞かれたくない話だし。
弁護士をつけてきた事になんか腹立たしい。
ここでは話したくないという内容を伝え、それではと弁護士の事務所に向かう事になる。
事務所到着。
3人会議室に入り、まずは旦那の開口一番。
旦那
「なんで帰ってこないんだ!」
「お前浮気してるんじゃないのか?」
食いつく様な旦那の発言。
それをなだめるように弁護士が抑え、そして私に問いかけてくる。
弁護士
「小百合さん長く家に帰っていない様ですね」
「失礼ですが理由をお聞かせ願えないでしょうか?」
沈黙する私。
というか・・
この状況は極めて私に不利。
こんな時は無駄な発言せず、黙秘を貫くのが定説。
後日準備して反撃してやる。
「沈黙は金」
沈黙を続ける私に弁護士は問いかけてくる。
弁護士
「お答え頂けない様ですね」
「このままの状況だと私共も法的手段を取らざる負えなくなります」
「そうなる前に対話で解決したいと思う次第です」
でたよ法的手段。
何ができるの?
離婚調停?
それぐらい?
私は離婚しても良いと思っているから、それなら調停の場で旦那の不貞を明らかにして、離婚を優位にしてやる。
尚更一層沈黙を続ける。
弁護士
「そんな子供の様な対応されても困ります」
「お話しましょう」
私
「今、話す事はありません」
「私帰っても良いですか?」
弁護士
「それは困りますねぇ」
「私は旦那さんの依頼を受けて貴女とお話しているんです」
「貴女の気持ちを少しでも伝えて頂ければと思います」
私
「私は監禁されているのですか?」
「貴方はどんな権限があって私を拘束しているのですか?」
「今日は急な話でここに来ました」
「今後はこちらも弁護士を立てて対応させて頂きます」
そうまくしたててハンドバックからスマホを取り出す。
私
「今の会話は録音させて頂きました」
「また後日会いましょう」
弁護士の表情が穏和から不機嫌に変わり、バンッっとテーブルを叩く。
弁護士
「分かりました」
「そっちがその気なら、こっちも対応させて頂きます」
「本日はこれで終わりましょう」
弁護士と私のにらみ合い。
旦那は蚊帳の外。
今後は私の職場や身辺に許可なく接近しない様に言い放つ。
たとえそれが旦那の依頼で有っても。
私の周囲に損害が及ぶようであれば法的処置をするから。
それから連絡は私のスマホに直接。
そして後日案内する事になる私の弁護士と連絡する様に。
けっこう強く言い放った。
弁護士が苦虫を噛んだような顔になる。
こんどは彼が沈黙してる。
私
「それでは私、帰ります」
言い残して部屋を出た。
ドアを閉めた瞬間、部屋の中から怒鳴り声が響く。
「なんだ!あの女は!」
いい気味だ。
相手が素人だと思って上から目線で接してきたのが貴方の失敗ね。
これから本格的な喧嘩の用意をしなくちゃ。
そう思いながら弁護士事務所を出た。
思い起こせば家に帰らなくなって・・
最初の内は旦那の連絡に答える様にしてた。
だんだん面倒になってきて・・
答える回数も減って・・
最近は返事すら返さなくなってた。
最後は着信拒否。
もういいや・・って思ってた。
旦那からの連絡もだんだん減って来て、もう私の事なんて忘れてると思ってた。
まさか弁護士連れて会社に来るとは・・
まだ未練があるのかなぁ・・
色々考えがらミュウちゃんの部屋に帰宅。
弁護士を探す為にPCで検索。
ちょうど男子君が帰ってきた。
そうだ。
ミュウちゃんに悪いけど、先に彼に確認しとこ。
私
「ねぇねぇ男子君、聞きたい事が有るの」
男子
「はい、なんでしょう?」
私
「心して聞いてね」
「あのね、もしかしたらね・・」
「ミュウちゃん妊娠したかも・・」
男子
「ほ・ほ・・本当ですか」
私
「彼女から言われると思うけど、どうする?」
男子
「どうするって・・もちろん産んで欲しいです」
私
「それは結婚するってこと?」
男子
「もちろんです」
私
「でも現実はどうするの?」
「仕事とか?」
男子
「仕事はしっかり探します」
「僕は彼女と結婚したいんです」
「僕の子供を産んで欲しいんです」
「僕は彼女を愛しています」
男子君が始めて会った時より凄く成長した気がする。
ミュウちゃんとの出会い。
初体験が彼を変えたのかもね。
彼は彼なりに考えている。
少し安心したわ。
私も出来る事、なんでも協力するね。
とりあえず検査薬と病院が済むまで焦らないでね。
それだけ伝えて会話を終了。
なんだか男子君がそわそわ、にやにやしてる。
嬉しそう・・
いいなぁ・・
私と旦那も昔はこんな感じだったのになぁ・・
思い出して少しノスタルジーに浸った私がいた。
続く。
途中から読む→第二章「小百合の場合その11」
途中から読む→第三章「小百合の場合その22」
私がここに来て二カ月くらい過ぎたかな。
男子君も住み始め、一月ほどの時間が過ぎた。
3人で楽しい生活だったと思う。
そしてある朝、一緒に出勤するミュウちゃんから相談される。
ミュウ
「小百合さん、実は・・来ないんです」
「生理が・・」
さすがにね・・
男子君が住むようになって、毎晩の様に二人で楽しんでるみたい。
私はどんどん参加しなくなって、最近分からなかったけど。
二人とも大人だから避妊とか任せて、特に干渉はしなかった。
月並みな返しだけど聞き返す。
私
「うん、それでミュウちゃんはどうしたい?」
ミュウ
「私は・・」
やっぱり女子としては悩むよね。
でも大切な事。
本音を教えて。
貴女がどうしたいかで今後が決まるの。
私も協力する。
最初に貴女が決めるの。
ミュウ
「私は・・できれば産みたいんです」
「彼の子供が欲しいんです」
「でも彼は何て答えてくれるか・・」
「そして両親にどう言われるのか・・」
そうだね。
心配だね。
男子君は会社辞めたばかりで仕事は派遣だし。
ご両親が反対する事も考えなくちゃね。
男子君の事は私も説得できるというか、協力出来ると言うか。
でもご両親の事はねぇ・・
どうしたら良いの・・
私もしばしの時間沈黙してしまう。
彼女が意を決したように言う。
ミュウ
「やっぱ辞めます」
「産むの辞めます」
その発言に、更に答えを出せない私。
二人の事はよく知ってるから。
だから余計に考えてしまう。
どう答えを導いてあげたら良いのだろう。
私
「とりあえず検査薬使ってみよ」
「それで出来てたら病院」
「後の事はその時考えよ」
そう言ってその場をなだめ。
二人で会社の入り口をくぐった。
女は来るもの来ないと不安になるよね。
その点、男は気楽だと思う。
来ない怖さとか無いもんね。
職場に入り自分の席に座ると同時にお呼びが掛った。
上司から応接室に来るようにと。
なんだろう・・
私、何か悪い事したかなぁ?
問題起こした?
少しばかり疑心暗鬼になって応接室のドアを開ける。
あっ!
来たよ・・
応接室のソファーに旦那と見知らぬ人が座ってる。
来たよ・・来ちゃったよ・・
とうとう決着をつけなきゃいけない時が。
上司から事の次第を説明受ける。
なんでも一緒にいる人が弁護士。
旦那の依頼を受けて同席してるそうな。
会社としては個人のプライベート干渉はしない。
今日は有休扱いにするから、ゆっくりお話ししてくれ。
そんな感じだった。
上司に聞かれたくない話だし。
弁護士をつけてきた事になんか腹立たしい。
ここでは話したくないという内容を伝え、それではと弁護士の事務所に向かう事になる。
事務所到着。
3人会議室に入り、まずは旦那の開口一番。
旦那
「なんで帰ってこないんだ!」
「お前浮気してるんじゃないのか?」
食いつく様な旦那の発言。
それをなだめるように弁護士が抑え、そして私に問いかけてくる。
弁護士
「小百合さん長く家に帰っていない様ですね」
「失礼ですが理由をお聞かせ願えないでしょうか?」
沈黙する私。
というか・・
この状況は極めて私に不利。
こんな時は無駄な発言せず、黙秘を貫くのが定説。
後日準備して反撃してやる。
「沈黙は金」
沈黙を続ける私に弁護士は問いかけてくる。
弁護士
「お答え頂けない様ですね」
「このままの状況だと私共も法的手段を取らざる負えなくなります」
「そうなる前に対話で解決したいと思う次第です」
でたよ法的手段。
何ができるの?
離婚調停?
それぐらい?
私は離婚しても良いと思っているから、それなら調停の場で旦那の不貞を明らかにして、離婚を優位にしてやる。
尚更一層沈黙を続ける。
弁護士
「そんな子供の様な対応されても困ります」
「お話しましょう」
私
「今、話す事はありません」
「私帰っても良いですか?」
弁護士
「それは困りますねぇ」
「私は旦那さんの依頼を受けて貴女とお話しているんです」
「貴女の気持ちを少しでも伝えて頂ければと思います」
私
「私は監禁されているのですか?」
「貴方はどんな権限があって私を拘束しているのですか?」
「今日は急な話でここに来ました」
「今後はこちらも弁護士を立てて対応させて頂きます」
そうまくしたててハンドバックからスマホを取り出す。
私
「今の会話は録音させて頂きました」
「また後日会いましょう」
弁護士の表情が穏和から不機嫌に変わり、バンッっとテーブルを叩く。
弁護士
「分かりました」
「そっちがその気なら、こっちも対応させて頂きます」
「本日はこれで終わりましょう」
弁護士と私のにらみ合い。
旦那は蚊帳の外。
今後は私の職場や身辺に許可なく接近しない様に言い放つ。
たとえそれが旦那の依頼で有っても。
私の周囲に損害が及ぶようであれば法的処置をするから。
それから連絡は私のスマホに直接。
そして後日案内する事になる私の弁護士と連絡する様に。
けっこう強く言い放った。
弁護士が苦虫を噛んだような顔になる。
こんどは彼が沈黙してる。
私
「それでは私、帰ります」
言い残して部屋を出た。
ドアを閉めた瞬間、部屋の中から怒鳴り声が響く。
「なんだ!あの女は!」
いい気味だ。
相手が素人だと思って上から目線で接してきたのが貴方の失敗ね。
これから本格的な喧嘩の用意をしなくちゃ。
そう思いながら弁護士事務所を出た。
思い起こせば家に帰らなくなって・・
最初の内は旦那の連絡に答える様にしてた。
だんだん面倒になってきて・・
答える回数も減って・・
最近は返事すら返さなくなってた。
最後は着信拒否。
もういいや・・って思ってた。
旦那からの連絡もだんだん減って来て、もう私の事なんて忘れてると思ってた。
まさか弁護士連れて会社に来るとは・・
まだ未練があるのかなぁ・・
色々考えがらミュウちゃんの部屋に帰宅。
弁護士を探す為にPCで検索。
ちょうど男子君が帰ってきた。
そうだ。
ミュウちゃんに悪いけど、先に彼に確認しとこ。
私
「ねぇねぇ男子君、聞きたい事が有るの」
男子
「はい、なんでしょう?」
私
「心して聞いてね」
「あのね、もしかしたらね・・」
「ミュウちゃん妊娠したかも・・」
男子
「ほ・ほ・・本当ですか」
私
「彼女から言われると思うけど、どうする?」
男子
「どうするって・・もちろん産んで欲しいです」
私
「それは結婚するってこと?」
男子
「もちろんです」
私
「でも現実はどうするの?」
「仕事とか?」
男子
「仕事はしっかり探します」
「僕は彼女と結婚したいんです」
「僕の子供を産んで欲しいんです」
「僕は彼女を愛しています」
男子君が始めて会った時より凄く成長した気がする。
ミュウちゃんとの出会い。
初体験が彼を変えたのかもね。
彼は彼なりに考えている。
少し安心したわ。
私も出来る事、なんでも協力するね。
とりあえず検査薬と病院が済むまで焦らないでね。
それだけ伝えて会話を終了。
なんだか男子君がそわそわ、にやにやしてる。
嬉しそう・・
いいなぁ・・
私と旦那も昔はこんな感じだったのになぁ・・
思い出して少しノスタルジーに浸った私がいた。
続く。
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