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小百合の場合(小説)その2

最初から読む→第一話「小百合の場合その1」

私の頭の中で色々な葛藤の波が四方八方から押し寄せては消える。
怒り・悲しみ・呆れ・笑い・無虚間
いろんな感情が小さな波の様に現れ、お互いが打ち消し合い、やがては穏やかな水面の様に。
そして落ち着くと、また何処からともなく小さな波たちが起きて打ち消し合う。
それが私の中で感情爆発しない理由だと思う。
突然降って湧いた事件の情報が大きすぎて処理能力が追い付いていない。
ただ負けたくないだけ。
こんなくだらない事件に負けたくない。
そう・・・
私は私の頭の中に暗示をかけてる。
「負けないで、こんなくだらない事で自分を見失ったら負けよ・・」

今日は平日。
平常心を装いいつも通り仕事をこなす。
もう慣れた仕事をいつもより集中力を上げて、決して嫌な思考が湧いてこない様に。
テキパキこなしている自分がスーパー仕事できる人間の様に思えて自惚れしてしまう。
きっと周りの人も「すげぇ・・」って見ているはず。
私は凄いはず!

キンコーンカンコーン♪(休憩時間)
ふぅ・・
いつもより早く予定の仕事量をこなし一息ついた瞬間集中力は途切れた。
あの動画の画像が脳裏によぎる。
 かりん「うふん(#^.^#) 今度は舐めて欲しいの?」
 旦那「ばうばう(ウンウン)」
 かりん「もうわがままな子ね」「おチンチン持ってきて」
 旦那「ばうばう(お安いご用で)」
 かりん「じゅぼぼぼぼ・・・じゅぼーー・・じゅぼじゅぼ・・・」
 旦那「キャゥーン キャゥーン・・・」
キョエェェェーーーー!!!( ゚Д゚)キャァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!
忘れてたはずの嫌な記憶が映し出された瞬間私は狭い事務室の中で奇声を立てて頭をかきむしる。
やめて、私の頭の中の記憶細胞さん。
今だけは、仕事中だけは眠っていて。
お願い。
嫌な画像を頭の中から消し去り我に戻った瞬間思い出した。
もしかして皆見てるの?
恐る恐る顔を上げると、周囲の同僚が驚きの表情で私を眺めながら、彼らは適切な距離を保ちつつも作り笑いで、なんと声を掛けて良いか分からない様子。
やってしまった。
私もどう対応して良いか分からない。
どうしよう。
嫌な雰囲気の空間でタイムリーに隣の同僚女子が「コーヒー飲んで」と声をかけてくれる。
「お疲れ様」
「今日は凄く頑張っていたもんね」
「一息ついて、もう少しで終業時間だから頑張ろうね」
彼女の優しい気遣いが周囲の緊張を解きほぐす。
凍りついた空間がすぅ・・っと雪解けの様に消えていき、いつも通りの雰囲気になって、私も本当の意味で一息入った。
ふぅ・・

終業まで残り約2時間。
やらかした恥ずかしさも相まって集中力は更に上がりテキパキと仕事をこなす。
終業前に自分の持ち分終了。
すこし時間が余った。
感謝の意味を込めて隣の同僚女子ちゃんの仕事を少しだけお手伝いしながら「さっきはありがとう(^-^)」と伝え終業時間を待った。
同僚女子ちゃんも笑顔で対応してくれる。
彼女から優しい笑顔で問いかけられた。
「小百合さんが大声出すなんて始めてだからビックリした」
私「ごめんねビックリさせて」
「どうしたの?」
「なにか嫌な事でもあった?」
私「いやいや、ちょっと色々とね」
「私で良かったら話きくよ」(〃▽〃)
優しい言葉のやり取りに感謝はするが、こんな恥ずかしい事同僚には話せない。
特に女子に漏らしたら噂話のネタにされてしまう。
旦那がエロ動画に出てたなんて恥ずかしくて言えない。
しかも素人投稿動画で犬になっていたなんて言えない。
でも・・誰かに少しだけ聞いてほしい。
私の心の叫びを聞いてほしい。
だれか助けて。
そう思いながら彼女の申し出を丁寧に遠慮する。
「ありがとう、大した事ないよ、くだらないことだから」
そう言ってその場を取り繕った。
私はいつもクールキャラを通して来たから今更キャラクターチェンジ出来ない。
こんな自分が恨めしい時がある。
もっと素直になれたらなぁ・・
キンコーンカンコーン♪(就業時間)

よし、仕事終了。
今日は頑張って仕事した自分にご褒美としてちょっとリッチなご飯とスゥィーツにしよう。
駅から近いこじゃれたあの店で。
爆食いしてやる。
だけど一人で行くのは寂しいし、なんとなく恥ずかしい。
だれか割り勘で一緒に行ってくれる人いないかな。
そうだ、同僚女子ちゃん誘ってみよう。
彼女に声を掛けてみた。
「ねぇねぇ、今晩あのこじゃれたお店に行かない?」
彼女「ごめん・・今日は帰らないといけなくて」
やんわりとお断りされる。
それを聞いていた後輩の男子が私に近寄ってきた。
男子「先輩、もしかしてあのお店ですか?」「あのぉ・・もしよかったら俺連れて行ってくれませんか?」
私、少し呆気にとられる。
男子「実は前から行ってみたかったんですけど、男一人で行くような店じゃなくて」
私「そういう事、分かった」「一緒に行こうか」
彼は願いかなって少し嬉しそうな笑みを浮かべた。
しかしここでたたみ掛けておく。
私「完全割り勘でご飯だけだからな」(^∇^)
側にいた同僚女子も笑いながら二人で行って来な的な雰囲気で、これはもう行くしかないっしょ。
3人でなごみながら職場を出て、同僚彼女とは駅で別れ、後輩男子と店に向かった。

続く。
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